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12月11日、川俣正はお昼の便で帯広空港に到着した。アートプロジェクトのビデオ・ドキュメンテーションを撮り続けているカメラマンの荒木隆久は、ひと足早い便で来て出迎え撮影。早速、会場の競馬場へと急ぐ。帯広では冬にしか行なわれないばんえい競馬が開催中なのだ。夏に人っ子一人いない競馬場を視察したカワマタは、競馬開催中の訪帯を希望していた。魔法のように、一夜にして出現した競馬場の町。そこでは食堂、公衆浴場、コンビニなどが突如として営業を始めている。まるで『千と千尋』のようだ。スタンドから厩舎地域に入ると、馬、馬、馬。これから出場するのか、興奮気味の馬たちが調教師に引かれて道を通る。空っぽだった厩舎には飼葉が敷き詰められ、厩務員の方たちが馬の世話をしている。柴犬も、外部からの侵入者である私たちに向かってひっきりなしに吠えたてて、ちゃんと自分の仕事をしている。カワマタは、厩舎外の柵にずらーっと並んだ馬を熱心に撮影、ふと足を止めると、そこ には蹄鉄の打ち直しをされている馬が一頭、お尻を向けて繋がれている。蹄鉄専門の鍛冶屋だ。やおら、尻尾がかすかに持ち上がり、なにごとかと思って見つめていると、フォーッとおなら一発。一同、大笑い。
夜のレクチャーは、これまでにないほど若者を集め、市民の方々もすっかりオトコ、 カワマタに魅了された様子。「詳しいことは合宿で」と、いとも簡単に聴衆をプロジェクトに巻き込んでしまった。さらに「一番面白いのは、展覧会が始まる前の制作時期」と言って皆をその気にさせまくる。帰りがけ、ボランティア・スタッフの畜大の学生さんに、「君たちの学校を出て騎手になる人はいないの?」と問うカワマタ、なにを企んでいるのやら、胸は期待で一杯。(敬称略) |
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