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物乞いの女、ラゴス、2001、12分
A Beggar Woman, Lagos, 2001, 12:00
ホームレスの女、カイロ、2001、6分33秒
Kim Sooja A Homeless Woman, Cairo, 2001, 6:33

今回の、『物乞いの女』では、ナイジェリア、ラゴスの街頭で、右の掌を上にして座り続ける。人々の脚だけがみえ、やや遠巻きに通り過ぎてゆくようであるが、近寄って小銭を与える人も現れる。物乞いという卑しい行為は、宗教の修行のひとつである托鉢につながる。そして人々は喜捨をすることで救済を託す。彼女は、物乞いという小さな身振りを通して、人々の間に生きてゆくことの孤独と連帯を探ろうとしている。
『ホームレスの女』では、カイロの街角の小さな広場に、行き倒れたかのように横たわる。遠巻きに眺める人、あえて無視し去る人、そして心配して様子をみようと肩をたたく女性など様々な反応の中で、彼女は動かない。
いずれの作品でも、現実の街の時間と、その中で身じろぎしない彼女の時間とが交錯して、ある覚醒の瞬間がおとずれる。そして、映像を見ているわれわれにも−−−。
キム・スージャのヴィデオはたんにパフォーマンスの記録ではない。みる者は参加することを求められる。それは心理的にだけではなく、時にはプロジェクションの光束に身をさらしてスクリーンに影を落とすような、身体的なものであってもよいかもしれない。(中村敬治)。








針の女,2000


Cities on the Move,1997


1957年、韓国、大邱(テグ)生まれ。
現ニューヨーク在住。

1997年のヴェネツィア・ビエンナーレまでは布を使用して作品を制作してきたが、最近ではバス(!)や映像などを使用して、表現が多様化してきている。一貫して「縫う」という考えをベースに、過去・現在・未来にわたって社会の中に綴られる、目に見えない人間の関係性の「糸」について、しなやかで魅力的な考察を続けている。

近年の発表

2000 個展『針の女』(ICC、東京)
2000 越後妻有トリエンナーレ(新潟)
1997 ヴェネツィア・ビエンナーレ(ヴェネツィア、イタリア)


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A Needle Woman is walking on the horse racing track... あ、針の女が動いてる…。黒い服に身を包み、ひとつに束ねた黒髪を背中にたらしたキム・スージャの後を追いながら、そんなことを思った。
「このデジカメ、息子に借りたの」なんて微笑み、彼女はゆっくりと歩を進め、ふと立ち止まり、シャッターを切る。韓国の布地を作品に用いているスージャはアイヌ民族の衣装にも興味を示し、アイヌ音楽を聴いて「アリランのリズムに似てる!」と喜んだ。「空気が澄んでいておいしい、水はまるでシルクみたい。こんな風に自然がちゃんと護られているなんて」と、初めて訪れた帯広がとても気に入ったようだ。
「その髪はいつから?」「学生の頃からずっと。手入れがたいへんでしょ? って言われるけど、実はこれがいちばん楽なのよ」とやさしく笑う。この笑顔と穏やかな話し方に私たちはすっかり魅了された。(敬称略)