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帯広のためのプロジェクト 天空にあるUFOと社(2002)
Project for Obihiro
Sky Bound UFO and Shrine(2002)


UFO型飛行船(直径30mx10m)が競馬場に現れ、その下には朱紅に塗られた社が結ばれている。オープニングの日、ガスが充填され空にUFOが昇り立つ。社は地を離れて中空に引き上げられる。帯広の広く青い空に浮かぶ白いUFOと朱紅の社は、夜には大地の上の月のように白く静々と、或いは希望に満ちた虹色にライトアップされる。
8月11日の夕刻、UFOの外周と社の床下に取り付けられた花火(ローマンキャンドル)に点火する。円形に斜め上方に吹き出すキャンドル花火にUFOは火炎の王冠と変わり、そして社は飛び立つロケットのように炎を地上に叩きつける。
垂直軸に向かうこの作品は、そこに拡がる地平線をいっそう際立たせるだろう。そして、過去の開拓と進入や宗教を含む文化の移植の歴史を乗り越える豊かで無垢な大地の力をこの作品は象徴している。(蔡國強)

蔡國強は上記のような構想を『デメーテル』のために発表したが、設営時の台風による強風のためバルーンの構造体が破損し、安全面における配慮からUFOを浮上させることは断念した。直径30mのUFOは空気を注入して地上に設置され、壮大な夢の残骸として作品化された。
なお、このような展示内容の変更から、UFOを使った火薬イベントも中止することとなった。(『デメーテル』総合ディレクター 芹沢高志)



 


Ascending a Staircase,2000


万里の長城を一万メートル延長するプロジェクト,1993


1957年、中国福建省泉州生まれ。
現ニューヨーク在住。

火薬を爆発させる大規模なプロジェクト群で知られる蔡だが、他の作品に用いられる素材は漢方薬から自動車のスクラップ、さらには生身の中国の伝統療法士や風水師まで、不思議な幅広さがある。その背景にあるのは「自然と人との対話」。 自然の表皮に刻まれた歴史の烙印と無限の生命力を読みとり、それを作品化することだ。人と作品と自然とが一体になったとき、そこにひとつの完璧なシステムが立ち現れる。

近年の発表

2001 横浜トリエンナーレ(横浜)
2000 越後妻有トリエンナーレ(新潟)
1999, 1997, 1995 ヴェネツィア・ビエンナーレ(ヴェネツィア、イタリア)
1998 台北ビエンナーレ(台北、台湾)
1997 イスタンブール・ビエンナーレ(イスタンブール、トルコ)

 
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8月26日、蔡國強は大阪から札幌に入り、翌日、列車で帯広に。二度目の帯広滞在となる今回は、奥さんの呉紅虹、娘さんの文悠を連れ立って、とてもリラックスしている様子だ。家族で、車窓に広がる雄大な十勝の風景を楽しんだという。一日遅れで、岩井成昭、ヴィンター&ホルベルトも帯広に入り、えらくにぎやかになる。みんなで夏草の茂る競馬場を歩いた。われわれとは作品プランについてあれこれ話し合っているのに、「おい、もう、なんか考えた?」と聞くヴィンターに、蔡は「まだまだ」とかすっとぼけて笑みを浮かべる。これだけのアーティストたちだ。すでにお互い意識して、駆け引きが始まっているなと考えると、おかしくなる。「欧米で仕事をしていると、社会的なテーマが自然と主題に浮かんでくる。でも、日本に来ると、なぜかわからないけど、宇宙のことを強く意識します」と蔡は言い、空を見上げた。純白に輝く雲が羊たちのように列をなし、真っ青な半球が広がっていた。(敬称略)